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宮崎県立芸術劇場のあれこれをお伝えします


by kengeki-kun
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101年目の太宰治「冬の花火」「春の枯葉」演出家よりメッセージ到着!

前回ご紹介した演劇系プログラム「101年目の太宰治 『冬の花火』『春の枯葉』」に出演する劇団
F's Company(長崎)、ゼロソー(熊本)の両演出家より、この作品にかける意気込みなどメッセージが届きました。

『冬の花火』
演出:福田修志(F’s Company・長崎) 劇団のHPはこちら。 

*作品のあらすじ*

終戦後、初めての冬を迎えた津軽地方のとある村。
東京から戻ってきた数枝の我が儘な態度に憤る父・伝兵衛。
数枝の夫である島田は、未だ戦地から帰らないが数枝には男がいるらしい。
そんな数枝に伝兵衛は、娘の睦子を譲って欲しいと持ちかけ、数枝を想う男・清蔵は、自分と一緒になるべきだと執拗に迫る。冬の津軽に場違いな線香花火が、燃え、落ちる。

*福田修志さんからのメッセージ*
60年以上前に変わらない日本の姿を描いた太宰さんの現実ってなんだったんでしょう?そんな想いを抱きながら、この戯曲と向き合っています。彼らにとっての未来である僕らが共感できてしまうことは、太宰さんの凄さなんだけど、それって悲しいことなんじゃないかと思えて仕方がないのです。でも悲しくてもそれが現実。現実は、そう簡単には変わらない。だったら過去の現実と今の現実とを煮詰めて、グツグツ炊いてみたらどうなるのか?混ざり合って解け合って、懐かしさとか望郷とは別のものが生まれるんじゃないか。丁寧に煮てみよう。出てきた灰汁はそのままにするので、苦みは大人の味と思って楽しんでみて下さい。

『春の枯葉』
演出;河野ミチユキ(ゼロソー・熊本) 劇団のHPはこちら

*作品のあらすじ*

1946年に発表された太宰の戯曲。戦後の津軽を舞台に、国民学校教師で婿養
子の男・野中彌一とその妻、義母、若い同僚と彼の妹らが、当時の社会
情勢や地元の因習などの重圧に思い悩み、あるいは強く生きていこうとする様
を、雪の下に堆積して翌春に再び顔を出す枯葉になぞらえて自らに問いかける。

*河野ミチユキさんからのメッセージ*
死にたくなるような敗北感が自分にも過去何度もあるけれど、それでもどっこい
生きている私には、まぁ、太宰さんのような気概が足りなかったのかと言えば決
して首を縦に振るわけにもいかない。生きていられるということは、その敗北感
はどこかで反転して笑い飛ばせるような物になってしまったのかもしれない。時
間がそうした猶予を与えてくれたのかもしれないし、また、例えばこうした著作
が現代の日本に残っている、ということだって私たちの生きる助けになっている
とも思う。だから、太宰さんがそうしたやるせない敗北感をとてもユーモラスに
表現しているこの「春の枯葉」を2010年に上演するにあたって、そこに現代
の私たちが思うユーモアなり興味なりをどうやって取り込んでいこうか、という
のが大きなテーマだと考えてます。これまで太宰作品を数多く読んでこられた方
も、初めて太宰に触れる若い方も、楽しんでいただける作品になれば、と思いま
す。
by kengeki-kun | 2010-04-08 13:11 | 自主公演